ふいご(鞴)‥‥金属の加工や精錬をする際に、火を起こしたり火力を上げるために
風(空気)を送る送風機です。
人、モノ、動植物、国や地域、事象など、世の中のあらゆる物事には
名前が付けられていますが、そのなかでも、「ふいご(鞴)」ほど
名前とモノが一致している(しっくりくる)と感じるものはないと
私は思います。
ふいごぉ〜、ふいごぉ〜と風を送っている様子や音、雰囲気がとても
よく伝わってきますし、この道具を「ふいご」と呼ばないのであれば、
他に何と呼べばいいのか分からないと思うくらい、名前とモノがマッチしており、
名付けた人のネーミングセンスが天才的過ぎて脱帽します。
なぜ、「ふいご」と名付けたのか、(なぜ「ふ」と「い」と「ご」のこの3文字を
この順番で並べようと思ったのか)是非、聞いてみたいです。
ちなみに、ふいご(鞴)には、皮鞴、踏み鞴(たたら)、箱鞴(吹き差し鞴)など、
いくつか種類があるようです。

箱鞴(吹き差し鞴)‥‥柄の部分を押したり引いたりして風を送り出します。
刀匠や鍛冶職人が刀や包丁などの刃物をつくるときに使います。
踏み鞴(たたら)‥‥板の両端を作業者が交互に踏んで、シーソーのように動かし風を送ります。
「たたらを踏む」という言葉は、この踏み鞴に由来しています。
古代から明治時代にかけて発展した日本独自の製鉄法を「たたら製鉄」といいますが、
日本の製鉄の歴史において、ふいごは重要な役割を果たしてきました。
ふいごの登場、進化によって、より大量の空気を炉に送り込み、温度を効率的に上げることが
出来るようになり、製鉄技術の向上につながりました。
(「たたら」と言う言葉は元々、踏み鞴を指していましたが、現代では日本古来の製鉄法全体を
意味する言葉として使われているようです。)
現在、私たちの日常生活の中では、ふいごを見かける機会は少なく、あまり馴染みがない
存在ですが、YouTubeなどで、鍛冶職人のそばで静かに力強くモノづくりを支えている
ふいご(箱鞴)の姿をみますと、名前だけではなく、その仕事ぶりも含めて、味わい深い
素晴らしい道具であるとしみじみ感じます。
ご興味のある方は是非、ご覧になってみてください。
投稿者 佐藤



